ものではないもの

ものの所有発作と名づけてみる。ぼくはものにふれ、ものをうごかし、ものをかい、ものをすて、ものをあたえ、ものをこわし、ものをかみがかりにしたい。
ぼくはなにかにかられるようにものに思いをはせる。いてもたってもいられなくなってどっかから落っこちたくなる。
ぼくはひとつのものをみよう。それ以外ないかのように。ぼくは本というものを手にとり、あらゆるものにつきものなあいまいなりんかくを押し込め、たったひとつのものとして手にしてから(犬の息がきこえた)ものではないものとして
読むことにしよう
ひらかれていて
たえず体はここにありながら
ものではないものとしてからだを向こう側へ
いつでも痛みがぼくをここに帰す
ということで。