海がさわぎ、大きな鏡がひとつ、わたしを映している。空を見ても地を見ても、苦悶するわたしの顔はどうどうと、せかいが割れ、そのき裂が古いたたずまいを、死んだ妖精の容貌を、ざわめきが死体を取り巻き、触れている手はとけ、消え入ろうとする火はあなたの胸を焼く、血はざらざらと舌をなで、狂い出した視界は、脳天をつらぬき、まずここにいるということが失われる、わたしの肉体はだらりんと床に倒れる、ものがものでなくなる、人がからだをうしなう、視線となったあなたは、わたしを破壊するためにわたしに向けられる、文字はつらつらと流れ、覚醒はどこかへ消え、次から次にあなたの父親の、痰や尿や便が、わたしの顔にぬられる、あなたは踊りあがって飛び跳ねてわたしを見つづけ、サラダをしゃきしゃきと噛む様子は、ときどきうかがわれた、動物園の猿じゃないんだから、声じゃないんだからメロウの礎のひかりの夜空、電磁石がびりびりと、少女の裸体をなめまわすという一種の病にとりつかれた科学者は、ときおりことばを運ぶさまを、幽霊に見せた、しまうまの肉を食らい、必死に生き延びようとした声のかぎりの導きの、つづきの先端に触れる焼け野はら、夜はいくつもの幻を見せ、身体の欠如も不都合ではない、絶えず拡張しようとする意志は、燃える石のように油を受け、蒸発と粘着がけっこうきれいなんだな、必ず破壊があるから、いつでも奇跡を起こせるんだ、だから、対象をずらす、天の声を裂く、ちりぢりになった雲が、太陽をまだらに隠すのを、すべてを奪うために、差し出す手を、切断する。