カフカ「城」、測量士

カフカの「城」を読んでいる。昔読んだときはつまらなかったけど、今はすごくおもしろい。測量士として城に来たということになったKの、昔からの助手ということになっている二人の男アルトゥールとイェレミーアスが、名前以外は見た目がそっくりなために見分けがつかない。そこでKは二人ともアルトゥールと呼ぶことにする。Kがアルトゥールと呼ぶとき、二人は一緒に返事をし、行動すること。……一箇所をあらすじ風に書いてみた。どうでもいい。ただ読んでいておもしろい。今日は使者のバルバナスが来るところから読み始めることになる。
昨日、町の東へ行って山の斜面を撮っていたら、すぐそばの家のお婆さんが回覧板を持ったままじっとこっちを見て「測量士さん?」と聞いてきて、びっくりした。その山は城に見えないこともない。あとにそのお婆さんから聞いた、経費削減のために土地の隆起のままコンクリートで固めたことによるうねるような斜面と、その斜面を三段に分けているフェンスは、まったく城っぽくないとは言いきれない微妙な城っぽさがある。年寄りは大抵相手の話を聞かない、自分が話したいことだけを話す、人生を悟っているから少なくとも僕みたいな若者から何かを学ぶことはない、と思っている。三十分くらい話したあと、「引き止めて悪かったねえ。でもあなたと話せてよかったよ。回覧板出さないとね。どうもね」と言われて、「いや、こちらこそ、おもしろい話が聞けました。ほんとう、よかったです。いろいろありがとうございました。ではまた」と意味不明にありがたがったのだった。そしてもう二度と会うことはない。十数年後にふとこのことを思い出すことがあったとしても、死んでいる。

もう夜の九時半。