写真

 1枚目の写真では、このものの影もこのものの立体的な延長として撮ることを試みました。たしかにそのものを撮ることができたと思うとき、写真全体がそのものを表していることが(あるいはそのものがあることを示唆することが)あるので、実際にはないはずのものを撮ることができるのではないかと考えたのです。結果、そこにその延長があったらしっくりくるのになあ、と思わせる写真になりました。

 2枚目の写真では、写真の四分の一にあたる上部以外は土山が占めています。四分の一というのは、青空を背景にした竹の密集です。それを背景に土山が崩れかかりながらそこにあります。その横の、画面外にあるだろう小型のショベルカーの影が、土山の一部を黒くしています。私はこれを前にしたとき、何もよくわからないまま、この土山を壁として撮ってみよう、と思いました。1トン以上の土が山型に積もっているはずですが、表面だけのものとしてみたのです。結果、土の表面が土の塊を覆っているような写真になりました。

 3枚目の写真では、手前の右側の壁によって左側に映し出された影の中で、向かい側の右側の建物とそれによって左側に映し出された影を撮っています。これは、1枚目の写真のときのように、そのものの影をそのものの立体的な延長として捉えながら、同時にその中で、つまり立体的な延長の四面体の中で、向かい側の建物とその延長を撮ることを試みたものです。普通四面体の中に入ることも、そこから外を撮ることも難しいですが、ここではそれを可能にしています。結果、写真にはそれがうまく写ったとは言えませんが、このことを実感することができました。
 その壁がなければ影がなかったように、見えないけどあるものは、見えるあるものに依拠しています。言葉と同じです。