扇風機が怖い。表情を変えずに風を送り出している。ぼくは扇風機をにらみつける。割れてしまえばいい。でも何も変わらない。当たり前だが、それが怖い。ぼくは足の指で扇風機の風量を調節する。強、から弱、になる。もっと怖くなる。ゆっくりとゆっくりと風を送り出している。ぼくは扇風機を思いきり蹴る。扇風機は音を立てて倒れ、だが羽は回り続ける。ぼくは扇風機を踏みつけた。何度も、何度も。羽のカバーがへこみ、羽がギラギラと当たる。ぼくは疲れて、電源コードを抜く。音はなくなり、風もなくなり、無表情のまま、沈黙する。