ざらざらと音がする、ぼくの頭は破裂の一歩手前だ、ざらざら、ざらざら。そしてその雑音の中に透明なものを見る、そう、ぼくはそれを心臓のように取り出してみることができる、透明なものに血の流れはない、脈打つこともない、しかしそれは心臓のようだ、心臓なのだ、ぼくはその透明なものを手にして、口の中に入れる。飲み込む。すると、ぼくの体が透けてゆく。ぼくはいなくなる、でももともといないようなものだった、そうなのだ。ぼくは消える、するとぼくのほんとうの心臓が脈打つのが聞こえる。ぼくのほんとうの心臓は冷蔵庫の中に入っている、誰がしまったのだろう、ぼくは消えながら思う、そして消える。わたしが冷蔵庫の前に立っている、わたしは冷蔵庫を開ける、そして中にあるぼくの心臓を見つめる、わたしはぼくの心臓を欲していた、そして今目の前にある、わたしはぼくの心臓を取り出す、そしてそれをそのまま口の中に入れる、口は広がり、心臓を受け止める、わたしはぼくの心臓を咀嚼する、そして飲み込む、何のために?それはわたしにしか分からない、わたしは冷蔵庫の前から立ち去る。わたしの中にぼくがいる。ぼくはわたしの中で生きる。生きて、死ぬ。