なにも考えていない。考えることができない。そう決めつけているだけか?そのことを苦しんでいるか?わからない。わかるのはここに木が一本あるということだけ。その木の下に男と女がいるということだけ。その男と女がまさに今話し出そうとしている。「なに?」「なにって?」「わからない?」「わからないよ」その男と女は雨宿りにその木の下に来た。その木は樹齢何百年の木だ。そのことを男と女は知らない。ただ大きな木だなあと思う。二人は会話に熱中している。虎が近づいて来ていることなども知らず。「だからなに?」「だからって?」「なになのよ」「わからないよ」結局なにも考えていないか?虎がやがて男と女を襲う。二人は首を噛みちぎられて殺される。考えることと関係があるか?わからない。死体が二つ横たわり、虎が肉を噛みちぎるだけ。