手から花が咲いた、ということは手の中に根があるということだ、手の中を根が絡みついている。白く清く咲く花よりも、そのことが気になる。根はどんどん伸び絡まり、腕を通って肩から心臓まで伸びるだろう、だってそうだろう、花はますます清く咲くし、手の中が尋常ではない感覚を有するからだ。ぼくは立ち上がった。すると尻から伸びていた根がぷちぷちとちぎれた。もう下半身にまで及んでいるのである。ぼくは病院へ行こうか迷った。でも結局行かないことにした、花がうつくしく咲く、そのことでぼくの気持ちは充分で一杯だったからだ。花はやがて枯れる。そのときにはぼくの体にも異常をきたすだろう。それまでの間、ベットで横になることにした。窓からは西日が差し込んでいた、鳥の声が聞こえた、鳥が部屋の中に入ってきて、ぼくの体に乗る、ちゅんちゅんと鳴く、それだけで十分ではないか?