片岡義男『窓の外を見てください』を読み終えた。ある批評家がツイッターに書いていたように「超自然体メタフィクション」だった。小説のなかに小説があるというのも不思議だった。小説のなかの小説が、小説を追い越そうとしていって、小説なのか現実なのか分からなくなるわずかな瞬間も楽しんだ。だがぼくにとってメタ・フィクションはもっと苦しいもの、底のないもので、迷宮のようなもので、『窓の外を見てください』は文体がとてもさっぱりとしていて、狂気はほとんど感じられない。印象的な描写が多くあり、特別な響きをもって伝わってくる。でも、書く動機もそうだが、主人公は問題を抱えていないように思える。ぼくは小説は、病人か、病人になりたい人が書けばいいと思っているから、この主人公みたいな動機で小説を書く人を、羨ましいとも思うし、それでいいのか、とも思う。この小説で、メタ・フィクションというものを初めて読んだ。ぼくとはまったく別の書き方をするこの小説は、まったく別のものとして、貴重な一冊だった。