村上春樹の『羊をめぐる冒険』を読んでいる。前半が終わるところだ。その少し前に『風の歌を聴け』を読んでいる。『1973年のピンボール』は途中で読みやめた。村上春樹は、友人が好きで、すべての作品を、何度も何度も読み返しているほどで、その彼の書く小説を読み解くためにも、ぼくが村上春樹を読むことには意味がある。『羊をめぐる冒険』を最初に読んだのは五年以上前な気がする。どのような感想を持ったのか覚えていない。いまも読んでいて、感想といった感想は浮かばない。奇妙な比喩が散りばめられてあることに対して関心を持つくらいだ。ぼくは、八月十日からほぼ毎日書いていた小説が、今日になって、書くことが止まった。ぼくは小説を書くときは読んでいる小説が原動力になるのだが、『羊をめぐる冒険』はいまのぼくにとっては原動力になり得ない。先月続けて読んだカフカ・セレクションの中の短編は、書くことの原動力になった。友人の書いた『夢』という小説に衝撃を食らってから、カフカの小説を読んだら、ふしぎとカフカの小説のおもしろさがわかって、それ以来カフカはぼくにとって重要な作家なのだが、いまぼくは『羊をめぐる冒険』に加え、『カラマーゾフの兄弟 中』と『モロイ』を読んでいるので、これ以上併読を増やすわけにもいかない。この三つの小説が読み終わったら、本格的にカフカに取り組もうと思っている。