今のぼくのこの状態を

 今のぼくのこの状態を言葉であらわすことはできるだろうか。たった一人であるはずのぼくの中に、他の無数のぼくが入ろうとしている、ぼくは抵抗するために横になって目をつむる、すると体から無数のぼくが離れてゆく、それを繰り返している。ぼくは眠っている間と寝起き以外は常にぼくの限界と立ち向かっている、「気が狂いそうだ」、ぼくは目をつむること以上の抵抗を求めている、他にはないのだろうか。やはり残っているのは小説を書くことだけか、批評はどうだろう、ぼく自身をぼくが批評する、ぼくの病の原因はどこにあるか、ぼくは小説は病をさらに深めてしまうのではないかという危惧がある、いや解決してさらなる問題があらわれるのだろう、ぼくはぼくを言葉にしてみたい、そしてそれに手を加えたい、村上春樹の『騎士団長殺し』のように、発症してからの回復にぎりぎりで手を加える、「私」の利用だ、ぼくは小説と批評に挟まれている、病にとって必要なのは批評であるが、小説にとって必要なのは病だ、ぼくはどちらへも行くだろう、そして限界を超えて見せよう。