ベケット『モロイ』

ベケット 『モロイ』について、ぼくは何かを書けるだろうか、持っているのは30ページ分だけ、それを何度も読み返している、何度読んでも分からないところは分からない、ただ文体が体の中へ波のように入り込んでくる、ベケットを理解するには、ベケットのように書いてみるしかないのではないか。一度読んで、読んだ気になったとしたら、それは間違いだ、30ページ分しか読んでいないが、この本は何度も何度も読まなければ底へはたどり着けない気がする、目が文字の連なりをうつろってゆく、なめらかに、言い間違い、言い換え、断定はなく、それらは心地よく波のように押し寄せる。