ここのところ考えていることを書いてみようと思う、といってもまとまりのあることを考えているわけではない、そもそも何も考えていないのではないか、こうして書き出してみるまで何か考えたことが浮かび上がってきてはいない、それでも書くことができる、何も書くことがないのに、それはふしぎなことだ、無為に浪費するのか、そうではない、分析できることが頭の良さではない、本を大量に読むことができることが頭の良さではない、読むということはふしぎだ、いったい何が起こっているのだろう、その文の節の行の、文字が体の中を通って行く、それはどういうことか、しかし今のぼくには書くことがない、考えていることがない、果たして今のぼくに考えることはできるのか、ぼくは何も考えていない、それを恥じてもいない、だが考えようと思う、例えば何について?例えば小説について、ぼくにとって小説とは何か、それは途方も無い問いだ、ぼくには何も答えることができない、小説とは?馴れ合うための道具ではない、分析するためのものでもない、ただ通過するためのものでもない、本は読みすぎてはならない、しかし読まな過ぎてもいけない、ということもない、本が読めないという状態に身を置くことが出来るか、その絶望的な状態で文字を綴ることはできるか、本を読むことが楽しいだなんて!ぼくは苦しみの隙間を縫い込むように本を読む、そして読めなくなる、気がふれそうになる、そして次の日の朝を迎える、朝は本を読むことができる、でもそれも限られた時間だ、彼はそこで立ち上がった、目にものを見せようと思い立った、しかし何も起こらない、ぼくは何を書いているか、結局何も書けなかったのではないか、ぼくは最初に立ち返る、そこでぼくは何も見ていない、何も考えていない、動物だ、追い詰められた動物が本を読むのだ、一行読めればやっとだ、大事に取っておこう、そして朝を迎える、動物は荒野を走る、影を背負いながら。